◆藤本なおや 委員  座長から時間ということもございまして、それに協力するためにも、手短に質問をいたします。簡潔にいたしますので、明快な答弁をよろしくお願いをいたします。
 まず、住基ネット訴訟の控訴審判決が言い渡されましたが、この判決について区はどのように評価しているのか、いかがですか。

◎法規担当課長 本件控訴の判決全体につきましては、判決当日に区長がコメントを出しましたとおり、区の主張が認められず、極めて遺憾に思ってございます。
 第一審と同様に、平成14年度の最高裁判例をそのまま引き写してあるという感がいたしますほか、分権時代の身近な政府として、区民の権利保護を図ろうとする区の主張が全く顧みられず、大変残念で、今日的な考察が全く行われていないというふうに考えてございます。

◆藤本なおや 委員  もっとゆっくり答弁してもらって構わないですよ。
 次に、この判決について、弁護人はどのように評価しているんですか。

◎法規担当課長 弁護団の判決に対する評価でございますが、内容が、底の浅い第一審判決よりも、表現も、よく見ますと後退を大分しておる。住基法の個別条項の裁量権は区長に一切ないとするなど、中央集権的な考え、配慮があると言わざるを得ない。それから、原審では、憲法13条からプライバシー権は保障されるとしておりましたけれども、プライバシー権すら憲法から導けないということも言っておりまして、これの導入というか、導きを否定しております。憲法の表現自体も後退している。国側の立場に立って、国に盾突くのはけしからんと、そんなような感じだというふうに発言をなさっていました。

◆藤本なおや 委員  さらに、学識経験者など第三者的な立場からの見解というものを区は伺っているのかどうか、聞いていれば、その見解をお示しください。

◎法規担当課長 次に、控訴審において鑑定意見をいただいた権威のある法学者の先生とか、それから調査会議にもお伺いをしましたけれども、法学者につきましては、一応すべての主張には答えてはいるけれども、弁護団の評価と同様に、底の浅い内容で、自治体の自治権、法令解釈権を全面的に否定している部分が特に問題で、法律の特に限定解釈の問題については全く無理解というふうに考えられるというお考えを伺っております。

◆藤本なおや 委員  控訴審判決後の区民の反応、意見、どれくらいあるのか、どのような意見が寄せられているのか、また、どういった方法でこの結果をお知らせしているのか、この3つ、あわせてお伺いします。

◎区政相談課長 控訴審判決後の区民の方からのご意見でございますが、ただいままでのところで4件ございます。
 その内容ですが、1つは、区の方針を支持する、今後も継続した訴訟を行ってほしいというご意見。それから、パスポートの申請とか年金の現況届に手間がかかる、あるいは切手代等がかかるということで、早くつないでほしいというご意見。それから、この控訴にかかわる税金のかかった金額とか主張の内容、それから裁判の経過等について公表してほしいというふうな中身でございます。
 回答につきましては、匿名の方もございましたので、回答していない方もありますけれども、電話等でのご意見については、そこで説明をし、またメールでの回答もこれからする予定でございます。

◆藤本なおや 委員  前回の連合審査会、二審の裁判をやるかどうかという報告のあったときの連合審査会でも、控訴するに当たっては、いろいろ議員からも賛否両論がありました。仮に控訴した場合であっても、区民への説明責任は怠ることなくしっかりやってくれよというような意見もその中で付されていたと、このように思いますけれども、この間、区としてどういった手段で区民の方々にこの住基ネット裁判、周知を図ってきたのか。また、それらが周知徹底を図ってこれたのかどうかという自己評価、どのように考えておられるのか、その辺はいかがですか。

◎区民課長 東京高裁への控訴に当たりましては、広報でほぼ1面を使いまして地裁判決の問題点をお知らせし、区の姿勢をご説明申し上げました。
 また、訴訟期間中は、6回口頭弁論があったわけですが、その回ごとに、広報と区ホームページでその内容をお知らせしてまいりました。また、ホームページでは、裁判所に提出した区の詳細な資料なども掲載してまいりました。さらには、転入された方々には、転入時の手続において区の姿勢をきちんとご説明申し上げるとともに、電話や窓口で質問等があった場合、丁寧にご説明申し上げてまいりました。
 委員の周知徹底という水準をどのようにとらえるか、難しいものがございますが、こうした取り組みを通じて、区として最善の説明責任を果たしてきた、このように考えております。

◆藤本なおや 委員  ここで論点を整理する意味で、この裁判は16年の8月24日に東京地裁に提訴した。それから一審判決が言い渡されて、平成18年の4月6日に東京高裁に控訴した。そして、今回こういった判決が言い渡されたわけなんですが、これまでの訴訟を通じて、区はどのような主張を展開してきたのか、また、一審判決後のその結果を受けて、高裁での戦い方というか、また主張、こういったものを変えるなり加えるなどして論法変更を行ってきたのかどうか、こういった経緯があればお示しをいただきたいと思います。

◎法規担当課長 それでは、少し長くなりますが、争点別にお話をさせていただきます。
 まず争点の第1、法律上の争訟でございますが、ここにつきましては、いわゆる平成14年の宝塚判決がございまして、それらと全く同じ事案ではないという主張をこれまでずっと展開してまいりました。これについては、一審の判決でこれが残念ながら認められなかったわけで、その後、控訴審につきましては、この判例の適用範囲、いわゆる判例の射程距離というふうに言っていますけれども、地方分権時代の今日的な意義について再検討、再整理を行って、主張してまいったものでございます。
 それから、争点の第2の都の受信義務についてでございますが、これは具体的には第1請求と第2請求、両方に係るものでございますけれども、第一審においては、区に段階的送信義務が裁量権に基づいてあり、段階的な送信は適法である、したがって、都には受信義務があるというふうに、私どもの送信は適法で、向こう側の受信拒否については違法であるという主張を展開してまいりました。
 これがまた受け入れられなかったという経過がございますので、第二審、控訴審におきましては、まず住民のプライバシー権を憲法上の権利と位置づけまして、この送信を、この者を除く者をいわゆる住基法の解釈上、限定的に憲法に適合するように解釈を行う、合憲的限定解釈を展開いたしまして、送信に適法性を与え、なおかつ、これを拒否する東京都の受信については、これを受信しない限り適用違憲になるというような論理構成を展開いたしました。
 控訴審におきましては、このほか、いわゆる自己情報コントロール権を認めた3つの判例についての主張を展開したことと、特に大阪高裁の判決をなぞってございますけれども、その部分について分析をしたほか、当時の自治体における情報漏えいの事件なんかを指摘いたしまして、危険性について再度主張したところでございます。
 こうした考え方を前提に、一審についても二審についても、都と、それから国については指導権でございますけれども、損害賠償を求めるものでございます。
 概略、以上でございます。

◆藤本なおや 委員  わかりました。
 前回の連合審査会で私も出席して質問させていただきましたが、高裁判決が出るまでにどれくらい時間がかかるのと、こういった質問をさせていただいたときに、役所の答弁では、大体その年の秋、冬ぐらい、長くても春ぐらい、まあ1年ぐらいで高裁判決は出るんだよというふうにご答弁されていたと思います。議事録にもそういうふうに載っております。
 しかしながら、実際1年8カ月ぐらい今回かかっているわけですけれども、この裁判が長引いた理由についてはどのように考えておられるのか、いかがですか。

◎法規担当課長 大きくは、途中で大阪公判がございまして、3つほど、いわゆる住基システムにおける自己情報プライバシー権について、その部分については認める判例と、それから停止、削除を求める大阪公判がありましたので、この分析、主張を行ってございます。そのほか、憲法上のプライバシー権の位置づけということでございますので、こうした状況について新たに鑑定書を提出し、主張を行ったものでございます。
 長くなった理由ということでございますけれども、通常ですと、一般的には読みおくからということで1回か2回ぐらいの口頭弁論の期日なんですけれども、裁判所側からこういった主張を認めていただいたということでございます。主な理由はそんなことというふうに考えております。

◆藤本なおや 委員  では、ちょっと論点を変えて質問しますが、これまで3年を超えて地裁、高裁と訴訟を継続してまいりましたけれども、これまでの訴訟にかかった経費、費用ですね、どれくらいになっているのか、総額、またその内訳を示していただきたいとともに、今後仮に最高裁まで戦うんだということであれば、その費用をどのくらい見込んでおられるのか、この辺はいかがですか。

◎法規担当課長 まず総額で、一審、二審と合わせまして4,374万円余となってございます。このうち、一審の部分が2,591万円余、二審の部分が1,782万円余でございます。
 仮に上告をいたしますとすると、弁護士費用、上告理由の補充書等の経費、それから印紙、郵券等合わせまして約1,000万円程度と見込んでございます。

◆藤本なおや 委員  内訳は。

◎法規担当課長 失礼いたしました。地裁段階で、弁護士着手金750万円、弁護士報酬1,312万円、月額62万5,000円、21カ月分でございます。鑑定書、意見等492万円、その他雑費、印紙を含めて37万635円。高裁段階では、弁護士報酬が1,250万円、鑑定書483万円のほか、雑費、印紙も含めて49万9,183円でございます。

○大泉時男 座長  藤本委員、最後の質問にして、後でまた回ってください。

◆藤本なおや 委員  ちょっとやらせてください。

○大泉時男 座長  やって、後で回してください。

◆藤本なおや 委員  はい。手短にやります。
 弁護団の体制について、区はどのように考えているのか。前回の連合審査会でも、控訴するに当たって、どう弁護人体制を強化し、立て直していくのかといった質疑もありましたけれども、仮に上告した場合、もう2度も負けているわけですから、これらの弁護団の組み直し、補強、こういったことについて考えているのかどうか、この辺をお伺いします。

◎法規担当課長 仮に上告をすると考えた場合、弁護団の体制でございますが、第一審、そして控訴審におきましても3人の弁護士で弁護団を組んでおるところでございます。的確に我々の主張を展開していただいたと思ってございまして、そのほか、権威ある憲法学者の鑑定意見書の提出を示唆いただくなど、これからもこの代理人となって進めてまいりたいと思ってございます。仮に大弁護団を使ってというか、編成いたしましても、これから大きく効果が出てくるということはちょっと考えられないので、こういった体制で行っていきたいと存じております。

◆藤本なおや 委員  現在も住基ネットをめぐって全国各地で訴訟が起こされておりますが、これらの状況はどうなっているのか、また、住民側が勝訴しているケースはどれくらいあるのかということを伺うとともに、先ほど来から大阪高裁の件がたびたび出ておりました。仮に区が上告をし、最高裁で争うことになった場合には、この大阪高裁の判例がどういう影響を与えると考えているのか。また、これらの一連の裁判を区はどのように評価をしているのかということをお伺いするとともに、では、まとめてやっちゃいますが、横浜市のことについてもちょっとお伺いをしておきましょう。
 昨年5月に住基ネットの総合的な安全性が確認できたということから、横浜市は7月から、選択方式というのをやめて全面参加ということに移行したわけであります。このことについて区の見解を伺うとともに、この動きが二審判決に与えた影響、どのようにとらえておるのか、この辺をお伺いいたします。

◎法規担当課長 まず、住基ネットの全国の訴訟の状況でございますけれども、国が被告となっておるものとなっておらないもの、合わせまして、現在53件でございます。このうち、住民側が現在でも勝訴しているものは、大阪高裁1件でございます。金沢地裁は高裁で逆転してございます。
 それから、大阪高裁の見込みでございますけれども、大阪高裁の期日指定がございましたので、通常ですと、その判断について変更がなされるということが予想されますけれども、当区の主張につきましては、いわゆる紛争解決の道筋をつける、訴えの利益がないと言われているものであっても、国が、こういう放置されている状況について原告適格を認めさせていくというような大きな目的がありますから、この部分がたとえ認められなくても、区の訴訟は意義を失わないというふうに考えてございます。
 それから、横浜方式についてでございますけれども、経過がございまして、この方式は、国を含めまして4者合意による方式でございまして、後出しで違法と言っておりましても、国とか県から最終段階まで是正による指導等も勧告も一切行われておりませんので、この方式自体が、杉並区が行おうとしている段階的な方式でございますけれども、直ちに違法であるということは考えられませんし、私どものが控訴審に行く前にこの方式がもう理由書作成時点でわかっておりましたので、主張としてはこの中に織り込んでございますから、それほど大きな影響はないというふうに考えてございます。

◆藤本なおや 委員  では、最後にします。
 「悪法も法なり」という言葉がありますけれども、幾ら法律が自分にとって不都合なものであったり、また不正であるというふうに感じ取った法律だったとしても、法律として生き続けている限りはその法律は守らなければならない、これがこの考え方になるわけでありますけれども、区長も、平成15年の第2回定例会で、行政の長として法令の遵守義務があって、法令を守ることは当然である、こういうふうに述べられております。そうであるならば、まずこの既存の法律を守って、またそれに従う中で、こうした法の不備について改正やまた廃止を求めていく、これが法治国家としてのあるべき姿ではないかなと、私はこのように考えております。
 また、前回の連合審査会においては、区は、セカンドオピニオンという考え方を示しまして、私どもも二審までの裁判には一定の理解を示してきたわけでありますが、今回の判決も前回と同様、また区の言い方をかりるならば、前回の判決より増して後退をしているんだというような認識が出ておりましたけれども、こういった現況において、区民の大切な税金を使っている以上は、これ以上裁判を続けていくことは到底区民の理解を得られることではない、私はこういうふうに考えますが、最後に区の見解をお伺いして、私の質問を終わりにいたします。

◎区長室長 ただいまの藤本委員の最初のご質問についてですが、第一義的には、私どもも法令遵守というふうに考えてございますが、今回のように、新しいIT社会を築く上で提起される新たな問題については、国、都あるいは自治体と考えが異なることが多々ございます。そうしたときには、話し合いをもって道筋をつけていけばいいわけですが、なかなかそれがままならないということで、今回訴訟ということになった次第ですが、第一義的な考え方としては、法令遵守というのはそのとおりだというふうに考えてございます。
 また、2つ目のご質問の、税金を使ってそこまでやるのかというような趣旨のお話ですが、こうした新しいテーマであるからこそ、先導的、先駆的な役割をどこが果たし、10年後、20年後の健全なIT社会を築いていく、その礎を今ここで築いていきたいというふうに考えるところからすれば、意義はあるものというふうに考えてございます。

◆藤本なおや 委員  結構です。